[音楽こぼれ話]“オスカー・ピーターソン“2010/04/27 12:22

 その超絶技巧と完璧な演奏から『鍵盤の皇帝』と呼ばれたオスカー・ピーターソンは、1925年8月25日、カナダ・モントリオールで生まれました。父親もアマチュアではありながら、才能のあるピアニストだったようです。5歳からピアノとトランペットを習いますが、結核を患い、ピアノに専念をします。高校ではクラシック・ピアニストのポール・ドマーキーに師事し、「技術と素早い指の動き」を身につけていきました。“魔法の指を持つ少年"は、14歳で、カナダ国営放送CBCコンテストに優勝、ジャズ番組にレギュラー出演するようになります。学校を中退し、カナダ各地でのコンサート活動を開始。モントリオールRCAビクターとレコーディング契約をします。

1943年からはモントリオールのジョニー・ホルムス・オーケストラに5年間在籍し、黒人として初のピアニストになりました。このころから、米国でのコンサート活動も活発になります。1949年にはノーマン・グランツの計らいで、カーネギー・ホールに出演し、国際デビューを果たします。それをきっかけに、チャーリー・パーカー、デューク・エリントン、エラ・フィッツジェラルド、ナット・キング・コールなど、60年間に渡って、多くのそうそうたるミュージシャンたちと共演することになります。

1951年には本格的なピアノトリオを結成。特にレイ・ブラウン(Bs)、ハーブ・エリス(Gt)のトリオは評判を呼びました。尊敬していたナット・キングコールとはピアノスタイルが似ていることもありましたが、実はオスカー・ピーターソンも唄が上手く、ふたりで話し合って、ナット・キングは唄を、オスカー・ピーターソンはピアノに専念することになったという話もあります。その後、レイ・ブラウン(Bs)、エド・シグペン(Ds)とのトリオは、”黄金のトリオ“と呼ばれます。1964年には故郷カナダに捧げた彼の代表作『カナダ組曲』をレコーディングしました。

一時期はソロ・ピアニストとしての活動に打ち込みますが、1972年にノーマン・グランツが設立したパブロ・レーベルのスタープレイヤーとして活発に演奏活動を行います。その後、やはりノーマン・グランツの設立したヴァーブ・レーベル、MPSなどでも多くの名盤を生み出しました。

生涯でレコーディングしたアルバムは200枚にもおよび、スタイルもブギウギ、ストライド、ビバップと多岐にわたります。グラミー賞を7回受賞するなど、数多くの名誉を与えられました。教育にも熱心で、トロントに"アドバンスト・スクール・オブ・コンテンポラリー・ミュージック」を設立し、公演で訪れた世界各地でセミナーを開きました。

1993年に脳溢血で倒れ、左手が不自由になり、歩くこともできなくなりました。リハビリを続ける間、一時演奏を中断します。子どもの学校の発表会で久しぶりにピアノを弾くことになりますが、そのとき諦めていた音楽の情熱が戻ったと言います。その後復帰し、演奏活動を続けました。1997年には生涯功労賞を授賞するなど、彼の音楽に対する変わらぬ姿勢は多くの人に影響を与え、賞賛を受けています。2007年12月23日、自宅で腎不全のため亡くなりました。

※ 次回はジョージ・シアリングをお送りします。
(文章:池田みどり)

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