[音楽こぼれ話]“アントニオ・カルロス・ジョビン その2“2010/09/01 21:26

アントニオ・カルロス・ジョビンが少年時代を過ごしたイパネマにはイパネマ海岸があります。海岸に面した喫茶店で彼はよく作曲をしていたそうです。たまたま前を通りかかった美しい女性にインスピレーションを得て、作られた曲が「イパネマの娘」です。1963年、ニューヨークで彼のファースト・アルバム「イパネマの娘」がリリースされました。

当時、サックス奏者のスタン・ゲッツがアルバム「ジャズ・サンバ」を大ヒットさせていました。ブラジル音楽を取り上げたアルバムの第2弾として、ジョアン・ジルベルト、アストラッド・ジルベルト、そしてアントニオ・カルロス・ジョビンをゲストとして迎えます。ジョアンはスタン・ゲッツのボサノバの捉え方が間違っていると指摘。ここでも緊張した録音逸話が残っています。しかし、このアルバム「ゲッツ・ジルベルト」は記録的なヒットとなり、ボサノバが世界の舞台に踊り出ることになりました。残念ながら、その後、ジョアンとトムの交流は途絶えることになります。

ボサノバがジャズ界でも大きく羽ばたいたきっかけには、フランク・シナトラの存在があるでしょう。当時、もっとも影響力のあったシナトラは、トムとの共作アルバム「フランク・アルバート・シナトラ&アントニオ・カルロス・ジョビン」を1967年にリリースします。同年、名プロデューサー、クリード・テイラーのレーベル“CTI”から、イントルメント・アルバム「波(Wave)」を発表。オーケストラ・アレンジは、巨匠クラウス・オガーマンが担当しました。「究極のイージー・リスニング」といわれるこのアルバムは世界的なメガヒットとなります。このころには、ボサノバは世界的な市民権を得るに至りました。
アントニオ・カルロス・ジョビンの主な活動は米国が中心になり、世界に向けて発信されましたが、彼はブラジルから離れることはありませんでした。

1973年には、さらに壮大なアルバム「マチタ・ペレー」を発表。ここでは環境問題に目を向けながらも、自然の美しさを歌う彼の姿があります。彼は、アマゾン熱帯雨林破壊などの環境問題にいち早く目を向けた音楽家でもありました。翌年1974年にはエリス・レジーナとの初共演作の、名盤「エリス・レジーナ&トム・ジョビン(ばらに降る雨)」がリリースされます。特にふたりのデュオ「3月の雨」の掛け合いは絶妙です。

1980年にクラウス・オガーマンの制作・プロデュースで、自身のボサノバ曲を英語とポルトガル語で歌ったアルバム「テラ・ブラジリス(Terra Brasilis)」を発表。1984年からは、家族を中心に結成したバンド「バンダ・ノヴァ(Banda Nova)」の活動が中心になります。
1986年には来日し、心地よいサウンドを聞かせてくれました。

アントニオ・カルロス・ジョビンは、1994年12月8日、ニューヨークで心臓発作のためにこの世を去りました。ブラジルでは大統領令が発令され、国民は3日間の喪に服しました。亡骸はリオ・デ・ジャネイロに埋葬されました。

ボサノバの多くのおなじみの名曲は、このアントニオ・カルロス・ジョビンの作曲です。彼が作曲活動を実際にしていた時期は、それほど長いわけではありませんが、その膨大な作曲数と、駄作がないことは驚くべきことです。まさに天才でしょう。天才肌でありながら、その人柄の穏やかさ、堅実さで、逸話こそ少ない人ですが、いつでもそこには信頼できる優しさがあり、彼のメロディのすみずみにそれを感じ取ることができる稀有の作曲家でしょう。

●代表作
The Girl From Ipanema, Água de Beber, Chega de Saudade, No More Blues,A Felicidade, Meditation, Desafinado, One Note Samba, Picture in Black and White, Sabia, Dindi, Corcovado, Quiet Nights of Quiet Stars, Samba do Avião, Song of the Jet, Wave, Águas de Março, Waters of March, Jazz ‘N’ Samba, How insensitive,

池田みどり

『THE JAZZ PIANO BOOK』 第7回2010/09/11 21:24

稲森康利ジャズ講座
『THE JAZZ PIANO BOOK』 第7回目を受講して 2010.8.22

今回は前回のメロディック・マイナー・スケール・ハーモニーの続きでsus♭9スケールと新しくディミニッシュ・スケール・ハーモニーを勉強しました。

ディミニッシュ・スケール・ハーモニーの項ではコンビネーション・オブ・ディミニッシュ・スケールとディミニッシュ・スケールが同じ構成音で出来ている事、その為に共通のヴォイシングが8つのコードで使える事などを教わりまた。

数が多くなかなか覚えるのが大変なスケールですが、稲森先生が効率よい覚え方を教えて下さいました。アドリブフレーズも分析し、理論的に説明して下さったので、闇雲に暗記するよりも頭に入りました。

1つのコードに対して使えるスケールは1つではないので、どのスケールを選ぶかは各自のセンスで決める事になります。
前回ピカソの話を書きましたが、音楽だけではなく絵を見る事も音楽的センスを磨く事につながるそうなので、私も展覧会に行こうと思います。

次回はホールトーン・スケール・ハーモニーです。

(文:川地千賀)

稲森康利ジャズ講座
次回は9月26日開催予定でしたが、20日(月・祝)に変更になります。

[音楽こぼれ話]“ミシェル・ルグラン“2010/09/16 21:20

「シェルブールの雨傘」「華麗なる賭け」などの映画音楽でおなじみのミシェル・ルグラン。クラシックとジャズを自由に行き来し、壮大なスケールの編曲を自在に操ると思えば、ピアノトリオで自ら歌も歌う。複雑な旋律と計算しつくされた和声を、奔放さの中で表現する。

1932年2月24日、パリ生まれ。父親はクラシックの指揮者で作曲家でもあるレイモン・ルグラン、姉はスィングル・シンガーズのクリスチャン・ルグランという音楽一家の環境に育つ。幼少よりその音楽の才能を発揮し、11歳から20歳までの9年間をパリ国立高等音楽院で学ぶ。ナディア・ブーランジェにピアノ伴奏を師事する。彼女は世界最高水準の音楽教師として、レナード・バーンスタイン、クインシー・ジョーンズも門下生に持つ。ミシェル・ルグランは在学中より、すでにピアノ伴奏者としてデビューを果たしている。1952年には、ディジー・ガレスピー楽団の編曲を手がけている。1954年にはピアノ・トリオでの処女アルバム“I love Paris”をリリース。1958年には、彼の代表作”Legrand Jazz”で、マイルス・ディビス、ジョン・コルトレーン、ビル・エバンスなどの当時を代表するジャズ・ミュージシャンたちをパリに呼び、レコーディングを果たしている。この作品はジャズ/ポップス界双方に彼の名を知らしめた。

一方、映画音楽では、ジャック・ドゥミ監督と手がけた「シェルブールの雨傘」「ロシュフォールの恋人達」(カトリーム・ドヌーヴ主演)が世界的なヒットをし、ミシェル・ルグランの名は世界に知るところとなった。1968年には、「華麗なる賭け」の主題歌「風のささやき」がアカデミー歌曲賞を受賞する。スティーブ・マックイーンの代表作でもある「栄光のル・マン」、007シリーズの「ネバーセイ・ネバーアゲイン」など、その数は枚挙にいとまがない。映画にも出演するなど、その多才ぶりを各メディアで披露している。

80年代になると、映画音楽と並行し、クラシックの指揮・監督業にも意欲を見せ、さらに90年代では、オペラやミュージカルの創作にも手がけている。2007年は生誕75周年記念ということで、オーケストラとともに、数回目の来日を果たした。

3度のアカデミー賞、5つのグラミー賞、各国での功労賞など、その巨人ぶりは誰もが認めるところである。

●映画音楽代表作
シェルブールの雨傘(1963), ロシュフォールの恋人たち(1967), 華麗なる賭け(1968), 恋 (1971), おもいでの夏(1971), 栄光のル・マン(1971), ビリー・ホリディ物語/奇妙な果実(1972), 三銃士(1973), 愛と哀しみのボレロ(1981), ネバーセイ・ネバーアゲイン(1983), レ・ミゼラブル(1995)

池田みどり

「ポピュラーピアノ奏法」第2回2010/09/19 21:17

稲森康利ポピュラーピアノ講座
「ポピュラーピアノ奏法」 第2回(2010.9.12)を受講して

今回は、Cadence(終止形)がクラシック音楽と違い、ジャズではⅡ-Ⅴになるという最も基本的な進行から始まりましたが、とに角ずい分進みました!Ⅱ-Ⅴ、ドミナントモーション、10度の伴奏音型を用いた例、メロディー奏法(シングルトーン奏法、オクターブ奏法Ⅰ、Ⅱ)等の譜例を、まさかの初見で弾かされました。冷や汗ものでした。
超特急ではありましたが、上記の奏法が駆使された曲を聴き、弾いてみて、改めてこの奏法による完成度の高さを思いました。初心者の方にとっては今回の内容のコードの転回型、10度の伴奏音型、オクターブ奏法Ⅱをマスターする事はかなり大へんではないかと思いますが、「リードシート奏法vol.1、vol.2」を併用されると楽しく会得出来るのではないでしょうか。
テキストにある「ムーンリバー」「あの愛をふたたび」は特に、そのまま演奏の仕事としてレパートリーに加えたいと思います。
デッドスポットの奏法については、ある程度の知識とテクニックがあった方が良いと思いますが…(私は指の練習を怠るとPassage,Arpeggios)の粒が全く揃わなくなります。)Passage,Arpeggiosの他にいろいろなフィルインが掲載されています。「Autumn Leaves」では7通りもの例が挙げてあります。いつも、その場の雰囲気や自身の気分にマッチした奏法で即座に弾けたらなんて素晴らしいのでしょう!
10度の伴奏音型もバリエーションが入ってくるとかなり複雑になりますが、「この伴奏音型を効果的に使うことによって、大変趣味の良い音楽が生まれる」と稲森先生も書かれています。今回はこの伴奏音型のバリエーションを使った楽譜「シェルブールの雨傘」まででした。

講座が終わると思う事はいつも同じ。もっとピアノを弾いていたい…と。
差し迫ったところでは10月3日の発表会に向けて全力投球します。(やっと曲のデザインが出来た所で、どうなることか。あせっています。)
今、この講座で教わっている事を何%位すぐに活用出来るかと、自分に問いかけています。とても恥ずかしい答しか出て来ません。日常の生活に流されない様にと気を引きしめてペンを置きたいと思います。稲森先生ありがとうございました。
(文:山口万弥)

講座テキスト:「ポピュラーピアノ奏法1」 


第28回オータムコンサート(稲森音楽教室発表会)は
10月3日(日)17時開場 17時15分開演
世田谷区立烏山区民会館ホールにて開催します。

The Jazz Piano Book 第8回2010/09/30 21:14

稲森康利ジャズピアノ講座
ザ・ジャズピアノ・ブック 第8回   2010.9.20

講座は通常第4週目の日曜日に行われていますが、26日(日)はオータムコンサート(稲森音楽教室発表会)のリハーサルがあっため、今回は20日に行われました。
前回に引き続き「Chapter9 スケールセオリー」から。今回はディミニッシュスケールハーモニーの残りとホールトーンスケールハーモニーを勉強しました。

「chapter10 スケールを使ってみよう」
この章では「Stella By Starlight」に学習したスケールを当てはめました。

「chapter11 スケールを練習してみよう」
スケールを練習するときの指使いは、メジャースケール、メロディックマイナースケールについてはピアノ学習者にはおなじみの「ハノン」と同様ですが、この本にはディミニッシュスケールとホールトーンスケールの指使いも示されています。

著者(マーク・レビン)は次のようにのべています。
「スケールはジャズのABC。スケールは自由に使える道具のひとつ。いつも楽器で歌うことを忘れずに。そのためにもスケールを練習しましょう。」

Practice! Practice!

(文 茂木)