The Jazz Piano Book 第11回2011/01/02 11:06

稲森康利ジャズピアノ講座
ザ・ジャズピアノ・ブック 第11回   2010.12.26

今回もアッパー・ストラクチャーの続きです。

アッパー・ストラクチャー・トライアドはリディアン・ドミナント・スケール、Altスケール、com-dimスケールといった、それぞれ対応するスケールから導きだされるそうです。
例えばアッパー・ストラクチャーⅠマイナー、♭Ⅲ、♯Ⅳマイナー、Ⅵはすべてcom-dimスケールから出来ています。アウ゛ォイド・ノートのないcom-dimスケールからできたアッパー・ストラクチャー・トライアドはお互いに交換が出来るので、自分が探しているハーモニーを効率よく見つけられるのではないかと思います。
稲森先生の理論書にはアッパー・ストラクチャーについてさらに詳しく書かれているので読んでおかれると良いと思います。
『ザ・ジャズコード』 稲森康利著(中央アート出版社)
『リードシート奏法vol.4』稲森康利著(中央アート出版社)

今年の講座は今回で最後でした。稲森先生、どうもありがとうございました。来年もよろしくお願い致します。

文:川地千賀

[Jazz on Youtube]“Oscar Peterson”2011/01/03 11:01

オスカー・ピーターソン “ Falling in love with love”

http://www.youtube.com/watch?v=2HcV_azEf5A&feature=player_embedded

 オスカー・ピーターソンはカナダ・モントリオールに生まれ、幼少からその音楽的才能をあらわしました。父と叔母からピアノを習いましたが、すぐに彼らを越えてしまいます。そこで、カナダ在住の世界的なハンガリー人ピアニストPaul de Markeyに技術と素早い指の動きの指導を受けます。彼がどんなに速く弾いても、ひとつひとつの音が粒だっているのは、幼少からの訓練の賜物なのでしょう。

カナダでの評判は、のちに名プロデューサーとなるノーマン・グランツとの出会いによって、米国での成功につながります。尊敬するアート・テイタムからはハーモニー概念とテクニックを、ナット・キング・コールからタイム感覚を、そしてテディ・ウィルソンからはハーモニーの動きと美しいラインを学んだといいます。多くのジャズの巨匠たちとの共演により、オスカー・ピーターソンはゆるぎない地位を確立しました。その超絶技巧とスウィンギーで流麗なアドリブなどの高い音楽性によって、「鍵盤の皇帝」と呼ばれました。およそ60年の長きにわたり、常にジャズ界のトップに君臨し、後進の指導にも熱心でした。1993年、脳溢血により左手が不自由になりましたが、復帰。レコーディングを続けました。生涯にわたるレコーディングしたアルバムは200枚近くにのぼり、グラミー賞を7回、生涯功労賞も受賞しています。1999年には、世界的な文化功労を顕彰する、高松宮殿下記念世界文化賞の第11回音楽部門を受賞しています。

「ピアノの前に座ると、デューク・エリントンが自分の一部になっている。エリントンだけじゃないよ。それは、ディジー・ガレスピーであり、サラ・ボーンであり、エラ・フィッツジェラルドであり、ビリー・ホリデイであり、チャーリー・パーカーでもある。彼らは私の中にいて、音楽で語りかけてくるんだ……」。とオスカー・ピーターソンは語っています。心からジャズを愛し、観客の前で弾く瞬間を「素晴らしい美の瞬間」だと言います。彼の演奏する姿から、その真実が伝わってきます。

 この映像は、1985年ベルリンでの演奏の模様だそうです。曲は“ Falling in love with love”(Richard Rodgers作曲/Lorenz Hart作詞)。ベースは長年彼と組んできたニールス・ヘニング・ペデルセン、ドラムはマーチン・ドリュー。

池田みどり

ポピュラーピアノ奏法」第6回2011/01/12 10:54

「稲森康利ポピュラーピアノ講座 
「ポピュラーピアノ奏法」 第6回を受講して  2011年1月9日

おくればせながら、新年おめでとうございます。皆様がいつも幸せな音色に包まれて笑顔でいらっしゃいますように!

毎年の事ながら、あっという間にお正月休みが終わり、気分も新たにこの講座の日を迎えました。稲森先生もとてもお元気そうなご様子で、講座は今回もテンポよく進みました。「ポピュラーピアノ奏法vol.1」は講座の前半で終了し、続いて後半は「ポピュラーピアノ奏法vol.2」が始まりました。vol.1の方は前回からの2 Hands Voicingで、これが最後のChapterです。全てのコードのテンションの把握は、かなりの時間と経験を要するものと思われますが、このヴォイシングでスタンダードナンバーを演奏すると、それは正に理論が実際と結びついた何一つ無駄のない美しいサウンドになるという「証し」ではないかと思います。とても素晴らしいです。この2 Hands Voicingは「リードシート奏法vol.3」で取り上げられています。数多くの曲と、ポイントポイントの模範演奏も掲載されていますので、このvol.3はぜひおすすめしたいと思います。

「ポピュラーピアノ奏法vol.2」に入って、Chapter 1はメロディー奏法です。今回はブロックコード奏法、オクターブ奏法、カントリーピアノ奏法の学習でした。シアリング(G.Shearing)奏法として有名なブロックコード奏法は、ある意味シンプルな感じを受けますが、とても魅力的は奏法だと思います。
オクターブ奏法(C.Cavallaro奏法)はカーメン・キャバレロがショパンのノクターンを弾き、一躍有名になりました。この“ノクターン”=“To Love Again”は当時1週間に1回はリクエストがあった様な記憶があります。ちなみに私は“Manhattan”が大好きでC.Cavallaroのピアノは憧れでした。
カントリーピアノ奏法は、昨年、ラウンジの様な所で“テネシーワルツ”を演奏しましたが、この奏法による“テネシーワルツ”は何か一種独特の反応があった様に感じました。そして開放弦の下にメロディがくるこの奏法はナント阿波踊りの三味線も同じと稲森先生が教えて下さって、ビックリです。日本でもアメリカでもCountry奏法は同じという事にもう一度驚いて、今年の最初の講座が終わりました。vol.2に入って、これから愈々内容は理論、演奏共に深く、醍醐味が増して行きます。稲森先生今年もどうぞよろしくお願い致します。

文:山口万弥

講座テキスト:「ポピュラーピアノ奏法2」

[Jazz on Youtube]“Herbie Hancock~Watermelon Man”2011/01/17 10:50

ハービー・ハンコック “Watermelon Man”
http://www.youtube.com/watch?v=dowhfQ0Fkns&feature=player_embedded

 現代のジャズ界でもっとも存在感を保ち王者の風格を持つのが、ハービー・ハンコックです。常に時代を先取りし、ジャズの動向の舵取りをしてきました。今回は彼の名をブレイクさせた“Watermelon Man”のプロモーションビデオらしきものをお見せします。

1940年4月12日、イリノイ州シカゴで生まれた彼は7歳でピアノレッスンを始め、なんと11歳でシカゴ交響楽団と共演しています。ジャズは高校時代に始め、大学では音楽と電子工学の二つの分野で博士号も取得しているインテリです。20歳でドナルド・バードに見出され、プロとしてキャリアをスタートしました。

1962年に初アルバム“Takin’ Off”をリリース。収録された“Watermelon Man”は、大ヒットし彼の名を知らしめました。翌年にはマイルス・ディヴィスに抜擢され、約5年間にわたり彼のグループに在籍します。この間に代表作”Maiden Voyage”(処女航海 1965年)などを発表。1973年には世間を騒がせたアルバム”Head Hunters"を発表。エレキトリックなサウンドで、ジャズの枠を広げました。1976年にはウエイン・ショーター、トニー・ウィリアムス、フレディ・ハバードらと"V.S.O.P.クインテット”を結成し、世界ツアーを成功させます。1983年のアルバム”Future Shock"では、ヒップホップを取り入れ、クラブ・ミュージックに大きな影響を与えました。1986年には映画『Round Midnight』の音楽監督を務め、アカデミー作曲賞を獲得しています。1998年にはジョージ・ガーシュウィン生誕100年を記念し”Gershwin World"、2002年にはジョン・コルトレーンの生誕75年を記念した”Directions in Music"を発表。2008年にはジョニ・ミッチェルへのオマージュ”River: The Joni Letters"で43年ぶりのジャズでのグラミー賞最優秀アルバム賞を受賞しています。1983年から11回ものグラミー賞を手にしており、まさにジャズ界の巨人です。

 ハービー・ハンコックの弾く姿は完璧にちかいのではないでしょうか?彼の手の動きは無駄がなく、姿勢にも風格があります。プライベートな感じでラフに”Watermelon Man"を弾いている姿がちょっと珍しいですね。インタビューにも答えています。訳は以下の通りです。
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アフリカン・アメリカンとしての自分自身の経験に基づいた曲を書こうとしていたんだけれど、ご存知のとおり僕はシカゴ生まれだし、刑務所に入った経験もなければ綿をつんだりした経験もない。ただ自分のバックグラウンドにあるキャラクターについてなら書けるかもと思ったんだ。そこで僕は考えた。僕のバックグラウンドの中で、誰が最もエスニックな存在だろうと。それがスイカ売りだったんだ。それがどれだけスライスしたものだろうが、僕自身は育てたことがなかろうが。
最初は、スイカ売りの呼び声のことを考えていた。「スイカ~、スイカ~、真っ赤でおいしいスイカ~」。ただこれはあまりメロディックに聞こえない。では裏口でスイカ売りに呼びかける女性はどうだろう。
「ヘーイ、スイカ屋さん!」
ワーオ。
「ヘーイ、ウォーターメロンマン!」
こうやって、メロディーが始まったんだ。」
(訳:MARKA)
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池田みどり

ザ・ジャズピアノ・ブック 第12回2011/01/25 10:46

稲森康利ジャズピアノ講座
ザ・ジャズピアノ・ブック 第12回   2011.1.23

今回は、アッパー・ストラクチャーの項でcom-dimコードで
progression of minor 3rdの使い方を、次章ペンタトニックの項ではペンタトニック・スケールのアドリブでの使用法を教わりました。

progression of minor 3rdは Evansが好んで使用した技法で、アッパー・ストラクチャーを使っている為テンションの効いた鋭い音です。稲森先生の編曲された『Wave』でも使われています。

ペンタトニック・スケールは日本で4・7節(4・ 7抜き音階)と呼ばれているもので、このスケールをメロディに使用したJohnny Mandelの『You Are There』が取り上げられました。
(Johnny Mandelは『Emily』『A Time For Love』など素敵な曲を数多く作曲しています。)他にも探してみましたが、『蛍の光』もペンタトニックで作られていますね。

ジャズのトニックでは3rdと♯9thを同時に使う事ができ、それによってメジャーともマイナーともいえない不思議な響き
が生まれる。ジャズのハーモニーは発展性があるから面白いと先生はおっしゃっていました。

次回もペンタトニック・スケールを勉強します。

文:川地千賀