吉開社長を悼む2016/12/30 17:42

12月15日、中央アート出版社の吉開狭手臣社長が亡くなりました。
文化的な貢献こそ出版の使命であるという強い信念を持った方でした。
その信念を持って稲森康利先生の著書をたくさん世に出してくださいました。稲森先生と吉開社長の出会いがあってこそ、我々はイナモリ・メソッドによる上質な情報を豊富に得ることができるようになったのです。
中央アート出版社が最初に出版した稲森先生の著作は「ポピュラー・ピアノ・スタディVol.1」(1982年1月)です。実はこの原稿は稲森先生が他の出版社から「ポピュラーピアノ教本を書いてほしい」という依頼を受けて執筆したものでした。40代半ばだった稲森先生は、そのころの日本にはなかった充実した内容のポピュラーピアノ教本にしようと熱意をもって執筆し、原稿の山を出版社に持ち込んだところ、担当編集者は「いやいや、こんなに厚い本ははいらないのです」といい、親指と人差し指の間をほんの少し開いて「こんなものでいいんです」といって出版を断ったそうです。そこで稲森先生は中央アートにこの原稿を持ち込みました。すると吉開社長は即座に「うちはこういうしっかりした本がほしかったのです」と言い、この山のような原稿は「ポピュラー・ピアノ・スタディVol.1」「ポピュラー・ピアノ・スタディVol.2」となりました。
それから30年、稲森康利先生の著作は多い時には年に4~5冊出た時期もあり、120冊に及ぶ著作が生まれました。ジャズ、ポピュラー音楽を学ぶ人たちが受けた恩恵は計り知れないものがあります。
吉開社長のご冥福をお祈りするとともに、そのご努力の成果が実りある形で引き継がれていくように、会員の皆様とともに力を尽くしていきたいと思います。
(茂木千加子)