Stella By Starlight (星影のステラ)2012/04/10 14:01

日を追うごとに暖かくなり過ごしやすくなりました。都内では桜が満開となりいよいよ春本番です。今回も春にちなんだスタンダードの中から、♪Stella By Starlight(邦題「星影のステラ」)を取り上げました。

<概略>コマドリのさえずる歌、繰り返し訪れる終わりのない春、夕暮れ時の小川のせせらぎ、恋人たちの隠れ家に立つさざ波。この素晴らしいシンフォニーのテーマは星明かりのステラ。私は思う、彼女こそこの世のすべてだと。

もとは1944年のホラー映画「The Uninvited(呪いの家)」のテーマ曲で、歌詞はその2年後、「星に願いを」などの作詞も手掛けたネッド・ワシントンによってつけられました。現在はラブソングとしてお馴染みのスタンダードですが、歌詞は映画の内容を意識しているのか、美しくもどこかミステリアスな表現描写がされていて、それがこの曲の魅力のひとつではないかと思います。Stella(ステラ)はこの映画に登場する女性の名前で、イタリア語で「星」を意味します。星の美しさに匹敵する女性、それも素晴らしいシンフォニーのテーマ (great symphonic theme)として讃えられているわけですから、極上の女性というイメージでしょうか。

タイトルに人名が登場するスタンダードにはこの曲以外にも、♪Alice In Wonderland, ♪Alfie, ♪Waltz For Debby, ♪Have You Met Miss Jones, ♪Mona Lisaなどが思い浮かびます。これらの名前の由来を簡単にご紹介しますと、Alice(アリス)はドイツ語のadal(高貴な)に由来、Alfie(アルフィー)はAlfred(アルフレッド)の愛称で、これは古い英語で「賢い助言」という意味、Debby(デビー)はDeborah(デボラ)の愛称で、ヘブライ語の「蜜蜂」が語源、聖書由来の名前でもあるようです。さらにJones(ジョーンズ)という姓は父親の名前に由来する姓で、「ジョンの息子(娘)」を意味します。たとえばMcDonald(マクドナルド)などのようにMc(マック)のついた姓はスコットランド系と言われますが、これはMcがスコットランドのゲール語で「~の息子」を意味するためで、これもJonesと同様に「ドナルドの息子」という意味で、姓のない時代に「~の子」と呼称したことが始まりのようです。Mona Lisa(モナリザ)のMona(モナ)はイタリア語で「婦人」の意、Lisa(リザ)はElisabetta(エリザベッタ)の短縮形で、これは「わが神はわが誓い」を意味するヘブライ語のEsisheba(エリシェバ)が語源、英語名ではElizabeth(エリザベス)がこれにあたります。

名は体を表すなどと言いますが、楽曲、映画、小説などのタイトルに使われる人名には、登場人物のイメージや作品の内容を示唆するものもありますので、そんな視点で作品を鑑賞してみるのも面白いかもしれません。

「星影のステラ」の「影」は「光」を意味します。一方で「影」は否定的な暗喩として使われることもあります。主観ですが、♪Stella By Starlightの邦題が「星明かりのステラ」ではなく「星影のステラ」と訳されているところに、まるで映画の内容をも暗示しているかのような言葉の「闇」を感じたのは私だけでしょうか。

文:藤澤ゆかり

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