Wave(A.C.Jobim)2012/08/27 16:33

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連日暑い日が続き、海で涼みたくなる今日この頃、今回はA.C.ジョビンのWAVEについて解説致します。
ジョビンが歌詞をつけて歌っているアレンジもありますが、私はギター1つでD majorで演奏されている音源を好んで聞いています。人の少ない、夕方の穏やかなビーチを思わせるような曲です。

曲の構成はイントロがあり、A B A の三部形式になっています。

イントロ【前奏】はDmとG7が繰り返され、クラシックの観点でこの進行はC majorのⅡ (2度)→V(5度)と同じように聞こえますが、テーマに入る直前、D majorの V7の5音、下方変位の役割になる、E♭7が入ります。(資料※①)

テーマ【A】の1小節目はD majorですが、2小節目からは、ジャズ理論でいうG majorのコードパターン③が使われています。(資料※②)

その後B majorのV(5度) → E majorのV(5度) → A majorのV(5度) → D major のV(5度)を経て、Dm に落ち着きます。今述べた B major→ E major→ A major→ D majorの調の関係を見ると、それぞれ下属調の関係にあり、終点にD majorを意識した進行です。
終点がDmでD majorの和音がコードが使われているのは1小節目だけと言ってもいいぐらいですが、調号はシャープ2つで、あくまでもD majorとして書かれているのはそのためです。

【B】はF majorのⅡ(2度) 始まり、後にE♭ majorのコードも使われ、♭系の曲調になります。【A】が♯系の調性が多かったので、【B】は柔らかい印象になり、また【A】に戻ります。

このように短い間に多くの調を経ていますが、非常になめらかに曲は進んでいます。今まで解説した曲は、斬新な転調が特徴的でしたが、Waveは転調というよりはたくさんの調からコードを借りてきていて、それでも自然にまとめられています。

穏やかな印象の曲なのに、分析してみると凝ったコード進行になっているのには驚きです。ジョビンの曲は「ジョビンの創作物」というよりは、曲そのものが「生き物」のように柔軟で繊細にフィットし、多くの人々に馴染んでいくのでしょう。

文:中田美月

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