[音楽こぼれ話]“ジョージ・シアリング“2010/05/12 22:08

 独創的で洗練されたジャズ・スタイルと、作曲家としても、安定した成功を続けるジョージ・シアリング。1919年8月13日、ロンドンで、炭鉱夫の9人の子どもの末っ子として生まれますが、生まれつき眼が見えませんでした。家にはピアノがあり、3歳のころには、ラジオの音に合わせてピアノを弾いていたようです。正式な音楽教育は、盲学校での4年間だけでした。奨学金を勝ち取りながらも、それを断り、クラブでの演奏を続けました。

プロデューサー/音楽評論家のレナード・フェザーとの出会いによって、1937年に彼とのファースト・アルバムを録音し、本格的にプロデビューします。その後、BBCラジオの出演、高級サパークラブでの出演などを通して、人気が高まります。20代でデッカ・レコードと契約し、イギリスで一番売れるアーティストとなります。1941年には“メロディー・メーカー誌”イギリス・ジャズ部門の人気投票に名を連ね、以降7年間その地位を不動のものにしました。

1947年にはニューヨークに移住します。1949年、MGMからアルバム"セプテンバー・イン・ザ・レイン“を発表。これはピアノ、ベース、ドラム、ギター、バイブのクインテットの、いわゆる”シアリング・サウンド“といわれるものです。緻密に計算されたグループとしてのサウンド、洗練されたクールな演奏は、ビバップ全盛時代に新しい息吹を送りこみ、彼の人気を爆発的なものにしました。1952年にはアルバム”バードランドの子守唄“をリリース。これらの曲は彼の代表作となります。

1955年にはキャピタル・レコードと契約。ハーモニカのトゥーツ・シールマンスがギターを弾き、クインテットに参加したアルバム”シアリング・オン・ステージ“を1957年に録音しています。この頃にはレコーディングを通して、多くの共演者との出会いがありました。歌手では、ナット・キングコール、ペギー・リー、ナンシー・ウィルソンなどと共演しています。1979年からはコンコード・レコードとの専属契約を結び、1982年の“アン・イヴニング・ウィズ・ジョージ・シアリング&メル・トーメ”は、翌年にグラミー賞のジャズ部門を受賞しています。ジョージ・シアリングはコンサートなどで自らも歌い、いい声を聞かせてくれます。また、ラテン音楽や、クラシックにも傾倒しています。

彼は、大学などでのジャズ・ワークショップにも力を入れ、ジャズ・テクニック、アレンジ、アンサンブル奏法を熱心に指導しています。また、盲学校や盲導犬養成所でチャリティー・コンサートもたびたび催しており、盲導犬を扱ったテレビ番組の作曲・演奏だけでなく、役者やナレーターまでこなしています。現在も、盲人のための協会や大学・組織などで、福祉活動を続けています。

1996年、大英帝国勲章を受勲。2007年、ナイトに叙勲されるなど、人々の多くの尊敬を集めています。

(文章:池田みどり)

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